そんな風に思いながら、売り場側からバックヤードのスイングドアに手を当てた。

中を伺いながら、そっと押すと、デスクの方から、須賀くんらしき声が聞こえる。


売り場の方から来るかと思ってたら、入店証をもらって中から来たんだ。

なるほど。お店はいつでも見られるけど、自分の担当店舗じゃなきゃ、こういう機会でもないとバックヤードは見られないもんね。

なかなか勉強熱心じゃん。


とか、言ってる場合じゃないか。

ここで、ついさっき、私を抱きしめてた元カレと、今現在、好きな人が会話をしているという特殊な状況を、きちんと理解してから中に入らないと。

まずは冷静になれ、あおい。

別に、須賀くんに見られた訳じゃないんだから。


深呼吸して、ほんの少しドアを開け、音を立てずに中に入った。

気持ちを落ち着かせながら、ゆっくり歩き始めると、匡史が喋っている声が聞こえて来た。


でも、その内容にビクっとして、すぐ止まった。

だって..........


「須賀くんとはこれからも仲良くして行きたいから、これだけは言わせて。」

「.........。」

「俺は、あいつのことで、絶対に遠慮はしないから。」

「..........わかった。」



それって、どういう意味?

ふざけた感じじゃなく、息の詰まりそうな会話だ。


これは、私のことなんだよね?

なら、さっきの態度からして、匡史はやっぱり私を好きでいるの?