「郁海、おはよう。ねぇ、今度、あおいちゃん来る日は、何がいいかしらね?」

「もう寒いから、バーベキュー以外。」

「じゃあ、お鍋とか?」

「それでいいんじゃん?」

「そう? じゃ、そうする。何鍋がいいかな?」

「お母さんに任せるよ。」


うちの家族もあいつを気に入っている。

このまま、ニセじゃなくて本当の彼女になっちゃえば、それこそすべてが上手く収まるのかもしれない。


だけど、俺の中にある消せない気持ちはゴマかせないし、あいつにも好きな男がいる訳だし。

そうそう簡単には行かない。


って言うか、もし向井くんとあいつが付き合うようなことになったら、ニセ彼女とか言ってる場合じゃないよな。

そろそろ今後のことも、ちゃんと考えた方がいいのかな..........


昨日の疲れとアルコールが残っているのか、鏡に映る顔が若干腫れぼったい。

一晩で何とかならなくなったってことは、いつまでも若いつもりでいるなってことなのか?


確かに、俺ももうすぐ25だし、誕生日が来たらアラサーじゃん。

いい年なのに、このままグズグズしてるのもマズいよな.........


そんなことを思いつつ、眠い目を擦りながら髭を剃っていると、リビングの方から興奮した様子の声が聞こえた。

それも、いつも一人で喋り倒している母親ではなく、珍しく物静かな父親の方。

これはきっと、兄貴の就任が決定したんだな。