「赤い岩みたいになってますよ?私が嫌です、恥ずかしい。治るまで待ってください。」
『岩!?』
泉さんは、電話の向こうで声をあげて笑っていた。
……珍し過ぎる。
『岩はすごいやん。逆に見たいわ。そっち着いたら迎えに行くから、ちょっとだけ出て来いや。』
はあ!?
「無理!だめ!絶対嫌です!」
『俺がかまへんゆーてるんや。いいから。』
「困ります!」
夜なんて普段でも出にくいのに、まして今は碧生くんがいるのに。
絶対無理!
必死で拒否したけど、
『何でもええから、逢いたいんやけど。』
と言った泉さんに苛立ちだけじゃない、切ない響きを感じて私は何も言えなくなってしまった。
結局私は、親に嘘をついて出かけた。
前橋から京都まで4時間ぐらいかかるからもっとゆっくりでいいのだけど碧生くんが帰宅する前に出たかった。
碧生くんに言い訳が通用するとは思えなかったから。
何より、碧生くんに見送られて泉さんに会いに行く、なんて想像するだけで心も体も張り裂けそう。
私は逃げるように、バスを乗り継いだ。
京都駅の新幹線改札口に立っているわけにもいかない。
この顔も、泉さんと一緒のところも、知人に見られたくない。
もう日が沈むのに大きめのサングラスをかけて、つばの広めの帽子を深々とかぶり、駅をうろうろとさすらっていた。
……惨めだわ。
両親なら、碧生くんなら、私にこんな想いはさせないだろうに。
私は、いったい、何をやっているんだろう。
悔しくて悲しくて、気を抜けば泣けてくる。
1人でじっと耐えるには、私は弱い子供過ぎて。
……泉さん。
本当にこのひどい顔を見て、どん引きしないだろうか。
19時半過ぎ。
人の波の中に、やっと泉さんを見つけた。
ボロボロと涙を流している私を見て、泉さんは私の顔を指さして、大笑いした。
「百合子、すごいわ。想像以上!めっちゃひどいわ!」
そう言いながら、私の帽子とサングラスを強引に引っ張った泉さん。
乱暴!
「目ぇ、溶けた?いつもの3分の1ぐらいちゃうか?まぶた、お岩さんになってるで。」
お腹を抱えてゲラゲラ笑う泉さん。
私は慌てて両手で顔を覆った。
「見ないでください。もうやだこんな顔見せたくないのに。」
すると泉さんは強引に私を自分の胸に押し付けるように抱き寄せた。
なっ!?
「ほな、こうしとき。顔、見えへんし。」
え~~~~~っ!
どうしよう。
こんな、駅の通路で、こんな!
「百合子、抱きたい。」
はあっ!?
耳元で囁くとかってレベルじゃない、普通の声で泉さんはハッキリそう言った。
周囲の人にもハッキリ聞こえたらしく、周囲が一瞬シーンとして、変な空気が流れた。
「恥ずかしい。」
私は泉の胸に、顔どころか頭まで隠してもらおうと、頬を強く擦り付けた。
「そのまま歩いたらええわ。」
泉さんはそう言って、強引に私を引きずる勢いで歩き出した。
『岩!?』
泉さんは、電話の向こうで声をあげて笑っていた。
……珍し過ぎる。
『岩はすごいやん。逆に見たいわ。そっち着いたら迎えに行くから、ちょっとだけ出て来いや。』
はあ!?
「無理!だめ!絶対嫌です!」
『俺がかまへんゆーてるんや。いいから。』
「困ります!」
夜なんて普段でも出にくいのに、まして今は碧生くんがいるのに。
絶対無理!
必死で拒否したけど、
『何でもええから、逢いたいんやけど。』
と言った泉さんに苛立ちだけじゃない、切ない響きを感じて私は何も言えなくなってしまった。
結局私は、親に嘘をついて出かけた。
前橋から京都まで4時間ぐらいかかるからもっとゆっくりでいいのだけど碧生くんが帰宅する前に出たかった。
碧生くんに言い訳が通用するとは思えなかったから。
何より、碧生くんに見送られて泉さんに会いに行く、なんて想像するだけで心も体も張り裂けそう。
私は逃げるように、バスを乗り継いだ。
京都駅の新幹線改札口に立っているわけにもいかない。
この顔も、泉さんと一緒のところも、知人に見られたくない。
もう日が沈むのに大きめのサングラスをかけて、つばの広めの帽子を深々とかぶり、駅をうろうろとさすらっていた。
……惨めだわ。
両親なら、碧生くんなら、私にこんな想いはさせないだろうに。
私は、いったい、何をやっているんだろう。
悔しくて悲しくて、気を抜けば泣けてくる。
1人でじっと耐えるには、私は弱い子供過ぎて。
……泉さん。
本当にこのひどい顔を見て、どん引きしないだろうか。
19時半過ぎ。
人の波の中に、やっと泉さんを見つけた。
ボロボロと涙を流している私を見て、泉さんは私の顔を指さして、大笑いした。
「百合子、すごいわ。想像以上!めっちゃひどいわ!」
そう言いながら、私の帽子とサングラスを強引に引っ張った泉さん。
乱暴!
「目ぇ、溶けた?いつもの3分の1ぐらいちゃうか?まぶた、お岩さんになってるで。」
お腹を抱えてゲラゲラ笑う泉さん。
私は慌てて両手で顔を覆った。
「見ないでください。もうやだこんな顔見せたくないのに。」
すると泉さんは強引に私を自分の胸に押し付けるように抱き寄せた。
なっ!?
「ほな、こうしとき。顔、見えへんし。」
え~~~~~っ!
どうしよう。
こんな、駅の通路で、こんな!
「百合子、抱きたい。」
はあっ!?
耳元で囁くとかってレベルじゃない、普通の声で泉さんはハッキリそう言った。
周囲の人にもハッキリ聞こえたらしく、周囲が一瞬シーンとして、変な空気が流れた。
「恥ずかしい。」
私は泉の胸に、顔どころか頭まで隠してもらおうと、頬を強く擦り付けた。
「そのまま歩いたらええわ。」
泉さんはそう言って、強引に私を引きずる勢いで歩き出した。



