「水島くんは7レースだから、14時過ぎるわね。それまで我慢できる?たこ焼きでも食べる?」
私がそう聞くと、碧生くんはしばしの沈黙の後、うれしそうに微笑んだ。
「いや、我慢する。せっかくだから、お昼はひつまぶしにしよう。熱田神宮まで足、伸ばそうか。」
碧生くんの提案に賛同しながら、私は自分に言い聞かせた。
……大丈夫。
今はまだ胸が疼くし動揺もするけど、私は碧生くんとつきあうって決めたんだから。
一旦、特観席に戻って涼み、6レースの号砲が鳴ってから再び下に降りた。
「ごきげんよう、お嬢様。今日は彼氏と一緒なんだね。」
ニヤニヤと笑いながら近づいてきたのは、中沢さん。
……今日は、って言った……
碧生くんがその言葉をどう受け取るのか心配で、私は硬直した。
ポンと、両肩に碧生くんの手が置かれた。
揺るぎない愛情を感じて、私は気を取り直して、中沢さんに挨拶を返せた。
「ごきげんよう。中沢さんは水島くんも応援してくださるんですか?」
「ああ。しょーりの弟子だし、根性ありそうだし、S級でも楽しみだよ。」
中沢さんはそう言って、第4コーナーのほうへと歩き出した。
「さあ、出てくるよ。声援送ってあげなよ。」
金網に近づく……高い。
奈良や京都とは、少し目線の高さが違う気がした。
「水島ー!がんばれよー!」
碧生くんがそう叫ぶと、水島くんは前方を見ながらも、小さくうんうんと何度かうなずいた。
……水島くんは、ちゃんと反応してくれるんだ。
「水島くーん!今日勝てば、明日は師匠と走れるよー。ほら、お嬢様も。」
中沢さんに促されて私も叫んだ。
「水島くん、がんばって!」
中沢さんに勧められて、碧生くんと2人で水島くんの車券を購入した。
「たぶん後ろを連れてくから筋の折り返しでいいと思うよ。配当安いから厚めにね。」
車券を買うのも初体験の碧生くんは、発券機も穴場と呼ばれる有人窓口も試したいらしく、2度に分けて購入していた。
「彼氏、好奇心旺盛だねえ。」
中沢さんの言葉に私はすました微笑を返した。
水島くんのレースは、単調なぐらいあっけなかった。
スタートから水島くんはずっと先頭誘導員の後ろを走り、打鐘(ジャン)が鳴って他のラインが動きだしても、前を譲らなかった。
「つっぱり先行か。若いね~。」
中沢さんは苦笑していたが、水島くんは1周400mを全力で駆け抜けて1着。
ラインを連れての完璧な逃走劇だった。
「すげぇ……」
碧生くんが金網を握りしめて目をキラキラさせていた。
「強いね、水島くん。」
一周走ってきた水島くんに碧生くんは叫んだ。
「水島ー!かっこいいぞー!」
水島くんはうれしそうにこっちを見て手を挙げた。
私がそう聞くと、碧生くんはしばしの沈黙の後、うれしそうに微笑んだ。
「いや、我慢する。せっかくだから、お昼はひつまぶしにしよう。熱田神宮まで足、伸ばそうか。」
碧生くんの提案に賛同しながら、私は自分に言い聞かせた。
……大丈夫。
今はまだ胸が疼くし動揺もするけど、私は碧生くんとつきあうって決めたんだから。
一旦、特観席に戻って涼み、6レースの号砲が鳴ってから再び下に降りた。
「ごきげんよう、お嬢様。今日は彼氏と一緒なんだね。」
ニヤニヤと笑いながら近づいてきたのは、中沢さん。
……今日は、って言った……
碧生くんがその言葉をどう受け取るのか心配で、私は硬直した。
ポンと、両肩に碧生くんの手が置かれた。
揺るぎない愛情を感じて、私は気を取り直して、中沢さんに挨拶を返せた。
「ごきげんよう。中沢さんは水島くんも応援してくださるんですか?」
「ああ。しょーりの弟子だし、根性ありそうだし、S級でも楽しみだよ。」
中沢さんはそう言って、第4コーナーのほうへと歩き出した。
「さあ、出てくるよ。声援送ってあげなよ。」
金網に近づく……高い。
奈良や京都とは、少し目線の高さが違う気がした。
「水島ー!がんばれよー!」
碧生くんがそう叫ぶと、水島くんは前方を見ながらも、小さくうんうんと何度かうなずいた。
……水島くんは、ちゃんと反応してくれるんだ。
「水島くーん!今日勝てば、明日は師匠と走れるよー。ほら、お嬢様も。」
中沢さんに促されて私も叫んだ。
「水島くん、がんばって!」
中沢さんに勧められて、碧生くんと2人で水島くんの車券を購入した。
「たぶん後ろを連れてくから筋の折り返しでいいと思うよ。配当安いから厚めにね。」
車券を買うのも初体験の碧生くんは、発券機も穴場と呼ばれる有人窓口も試したいらしく、2度に分けて購入していた。
「彼氏、好奇心旺盛だねえ。」
中沢さんの言葉に私はすました微笑を返した。
水島くんのレースは、単調なぐらいあっけなかった。
スタートから水島くんはずっと先頭誘導員の後ろを走り、打鐘(ジャン)が鳴って他のラインが動きだしても、前を譲らなかった。
「つっぱり先行か。若いね~。」
中沢さんは苦笑していたが、水島くんは1周400mを全力で駆け抜けて1着。
ラインを連れての完璧な逃走劇だった。
「すげぇ……」
碧生くんが金網を握りしめて目をキラキラさせていた。
「強いね、水島くん。」
一周走ってきた水島くんに碧生くんは叫んだ。
「水島ー!かっこいいぞー!」
水島くんはうれしそうにこっちを見て手を挙げた。



