私は泉さんの頬から顎のライン、エラのカックンと骨張った部分に手を這わした。

「何してんねん。」
泉さんの声が呆れてる。

「もぉこんな機会ないし、触っておくの。手も触らせて。」

「……駅やで。京都行きの終電まであと10分。行けるか?」
泉さんがそう言いながら、駅のベンチに私を座らせてくれた。

「手ぇ!」
無理矢理、泉さんを隣に座らせると、私はその手を両手で包み込んで、もてあそんだ。

「この手がね、好きなのよ。指が動くのを見てるだけで……」
身体の奥が疼いて来るの……。

涙がホロホロとこぼれ落ちた。

「おい、電車!帰らんつもりけ?」
「帰るもん。帰ればいいんでしょ!泉さんなんか、だいっきらい!」

支離滅裂なことを言って私は立ち上がり、数歩進んで、またずるずると崩れた。

……腰が立たない。

しかも、今、動いたことで……気持ち悪くなってきた……。

「百合子?大丈夫け?」
近づいてきた泉さんの両腕をつかまえて、私はぶるぶると首を横に振った。

「……吐く……」
「はあっ!?待てっ!便所連れてったるから!」

……無理……もう動けない……

しゃがみこもうとする私を泉さんは抱き上げて、駅のトイレに連れてってくれたけれど、間に合わなかった。

私は泉さんに抱かれたまま、噴水のように嘔吐し、結果……私達は2人とも酷く汚れてしまった。

悪夢だと思いたい……。