「やっと顔上げた。」

そう言う和希の顔は夕日に照らされていた。
キラキラとした光に包まれるように観覧車のゴンドラも真上に差し掛かった。
和希はそっと立ち上がり美羽の横に座ると抱き寄せて優しくキスをした。

「愛してるよ、美羽」

そう言い残し、下降していく途中だ。リンっと鈴のような音がした次の瞬間美羽の前から和希の姿はなくなっていた。

時計の針は紛れもなく18時を差し、10…11…12…と秒針は進んでいった。観覧車が下まで下がりきり受付のお兄さんの反応を見て美羽は確信した。

「お帰りなさい!」

そのお兄さんは、始めから美羽しか乗らなかったように出迎えてくれたのだった。