「私は、自分の評判なんてどうでもいいのよ。

 あんたの名前に傷を付けたくないの。
 あんただけは、みんなに愛されてて欲しいのよ!」

 だけど……と小さく呟く。

「だけど、さっき昇降口から逃げ出したのは、介弥の名前に傷がつくと思ったからじゃなくて……

 介弥と姉弟だって、みんなに知られるのが、嫌だったから」

 鞄を取りに行かれるのが嫌だったのも、先生に言われるのが嫌だったのも、みんなそう。

 気のない素振りをしながら、余計なことをという振りをしながら、舞こそが、介弥と他人でいられるこの楽園に甘えていたのだ。

「俺たちが姉弟だと知っているのは身内だけだ。
 学校を出たら遠くへ行こう?」

 それでいいじゃないかと介弥は言う。

「俺は― 別に両親と縁を切っても構わない」

「やめてよっ」
 舞は叫んでいた。

 その勢いに押されたように介弥が目を見開く。