物心がつく前から習わされていた剣道。
気づけば、握っていた刀。

…怖いなんて、一度も思ったことなかった。


「やめっ!」

師匠の力強い声が道場に響く。


「やぁ〜、また強くなったかい?
平助くん。」

にこやかに微笑んで僕の頭を撫でるのは、師匠である伊藤甲子太郎先生。


僕の相手をしていた多門は、
「あちぃー。」

なんて言って大の字で寝転んでいる。


「多門が、あんなふうに練習をサボってるから、僕が上達して見えるだけなんですよ。」