バタンッと荒々しく部屋のドアを閉めて、カバンを投げ落とし、そのままベッドにダイブした。


うつ向けになって枕に顔を埋めたら、ずっと我慢していたものが溢れた。


それは止まらなくて、しょっぱくて。


あぁ、私は蓮が大好きなんだなって痛感させられて。


きっと私達両思いだろうなって思ってた昨日までの自分を殴りたくて。



「っ千明ちゃんになんて勝てるわけないよ…!!!!!」

嗚咽混じりにふと出たその本音。


愛沢千秋という人物は、男子バスケ部マネージャーしていて、私と蓮の直接の1年下の後輩。

見た目も小動物のようにちまっとしてて可愛らしく、器用とは言えないけど何事にも一生懸命ですごく好感の持てる子。




「…千明ちゃんなら、仕方ないのかぁ」


蓮のことは諦めた方がいいのかな…。


そんなことを考え出した時、ブーッと音を立ててケータイが揺れた。


電話…かな、誰からだろ。


誰からの着信なのかも確認せずに電話に出た。


「もしもし」


「もしもし、美桜?」


「っ…蓮…?」


「おー、俺だけど。大丈夫か?」


「は?」


いきなり電話してきて大丈夫か?って…何なのこいつ。


呆れながらも、そんな馬鹿なとこも好き、とか思っちゃう私はおかしいのだろう。


「さっき、泣きそうな顔してたから」


「っ…あぁ、大丈夫。全然平気。泣きそうな顔なんてしてた?」


「してた。無理すんなよ?」



蓮に隠し事なんて不可能だったね。




「ねぇ、蓮…」


「ん?」


私じゃダメ?

「千明ちゃんと、仲良くね。お幸せに」



私は本音を殺して、蓮の幸せを願おうかな、なんて。