「あの、さ…話したいことあるんだけど…」


部活終わりの帰宅途中、蓮が気まずそうに口を開いた。


「ん?何?」


「…俺、彼女出来た」



「…え?」

一コマ遅れてやっと出た言葉はちっぽけなもので。

衝撃的で、ショック過ぎて…頭が真っ白になる感覚に襲われた。


「そ、そうなんだ…おめでと」

掠れた声で告げたその言葉も本心じゃなくて。

「い、いつの間に彼女なんて作ったの!?蓮もやるねぇ~」

なんて言って笑って、涙が出そうなのを堪えて。


…この話題を、早く終わらせたくて。


「おう、ありがと。美桜なら祝ってくれると思ったわ」

なんて、アンタは私の気も知らずに楽しそうに笑って。


「で、どんな子なの?」

聞きたくもないのに、笑って聞いて。


「1年下の後輩。…てか、美桜も知ってるだろ?愛沢」


…その彼女は部活の後輩で、マネ業も一生懸命頑張ってるすごくいい子で。


「千明ちゃん!?アンタにあんな可愛い子勿体無いね」


あぁ、もう嫌になる。

早く家につけ、なんて願いながら足を進める。


「まぁ、そういうことだから…あ、俺明日から愛沢と登下校するから」


「え…?千明ちゃんの家反対方向でしょ?」


「い、いーだろ別に!!」


「っ…」


あーあ、見なきゃよかった。


顔を真っ赤にする蓮は、千明ちゃんと少しでも長くいたいって言ってるようだった。