「あっ。クレープだ。食べない?」



俺を見上げる上目遣い。
首をかしげて、にこっと笑ったと思えば。



俺の腕を掴んでひっぱり、屋台に並ぶ。


「ヤヨクレープは好き?」


「普通」



つうか、腕離せ。



「あ、腕逃げた。うーん、じゃあ一個買って分けよー」


「それでいいよ」



何味にしよう、って今日だけで何回迷えば気がすむんだ。


「お兄さーん、どれがオススメ?」

「ブラウニーの入ってるのが人気だよ!」


「ブラウニー……ヤヨブラウニーすき?」



俺が頷くと屋台の兄ちゃんとやりとりで、なぜかトッピングがどんどん増えて。
なぜか100円引きまでしてもらってた。


……すげぇ能力。



「おいしー。わがままセレクト」


スプーンで掬って差し出してきた。
いつもこれ。
何のためらいも恥じらいもなくこれ。



「はい、あーん」

「しねぇよ」



芙祐が左手に持つクレープの方に噛り付いた。


「どう?おいし?」


嬉々として俺を見上げる。


「……うまい。」



そういう俺を見て嬉しそうにあいつは笑う。


ほら。今だって。
ドキドキさせられるのは俺の方。