教科書を叩きつけても山田はぐちぐち。ねちねち、いじいじ。
全然勉強が進まない。



「もー、うるさいなあ」



家庭科のソーイングセット。
白い糸ないや。
赤が可愛いから赤ね。



「まじで!つけてくれんの!男のロマ」「縫い付けるまでにそこ暗記しなかったら刺しちゃうね」


針先きらり。



「……ハイ。着たままで縫える?」


「隣で裸の山田がいる方がやだからね」


「そっすか……」



シャツをグイって引っ張って、適当にボタン留め。
一か所に縫い目を集めたい。
意地だよね。
ちょっとハマってきた。




「でーきた」


ポンポン。シャツの皺を伸ばす。
我ながら天才。上出来。
山田にはもったいないね。


山田を見上げれば、ばちっと目があった。
真っ赤な顔した彼を睨む。




「……ちゃんと勉強してた?」


「あ。いや。あの、ほら」


「もう知らない。留年おめでとう」


「やるから!今すぐ覚えます!!」



山田のことはほっといて帰ろうと思ったら、
あたしより先にヤヨが教室出て行った。



今廊下とか玄関ではち合わせても、
なんとなく、ヤヨに話しかける気分じゃない。