あたしは一歩後ずさり。
後ろは壁。
今ね、王手かけられたとこ。



「ヤヨどうしたの」


わかった。
あたしのことキライなのはわかった。



今日のヤヨは狂犬をはるかに超えて、サディスティック。



「「……。」」




両者沈黙。

睨みすぎだよ。
生唾ごくりと飲み込んだ。



うん、降参。
両手を上にあげてみる。



「き。キライなのはわかったから。刺さないで?」


「……刺さねえよ。バカじゃねえの?」



そう言ってパッとあたしから離れるとドアの方へと進んでいく。





「……別にキライでもないけど」



「好きでも嫌いでも……ってことはふつー?」



ヤヨは足をとめて、一瞬あたしを視界にいれて。
また前を向きなおした。



「普通ってわけでもないんじゃね」




ぴしゃんとドアを閉められてあたしは教室に取り残された。



机に腰かけて、足ぶらぶら。



あたしのこと、ヤヨは好きでも嫌いでも普通でもないんだって。



えーっと。
それってなに?「無」ってこと?



それならキライな方がマシだよね。



「かーえろ」



机の上に座ったまま、足を揺らして遠心力。
1・2・3で着地。



ヤヨのばーか。