「この傘慶太くんに返すやつ?」


「あーそう。休み時間英文科のクラスに行ったけど、誰もいなかったんだよな」


「英文科って今お勉強合宿だからね。ついでにあたしが返しとくよ」


「なんのついで?」


「今度遊ぼっかって話になってるから」


「ふうん」



不機嫌な俺。上機嫌な芙祐。



書類をとんとんと揃える小さな手。指先のピンクの爪が目立つ。
あいつの薬指に指輪がついては外れるのを、ずっと見てきた。



「次くらいよく考えてから付き合えよ」


「失礼だなぁ」


どっちらかと言えば少しつり目。人より大きな目。
長いまつ毛を伏せて、ぷるんと潤ったピンクの唇。
口角がきゅっとあがる。



「いつもちゃーんと考えてるよ」



とんとん。四隅揃ってないまま、パチン。



芙祐の作った資料は雑だ。どっちが作ったかすぐにわかる。



クラスの男子は基本的に雑な資料を選ぶ。


バカばっかりだ。