冒頭はね、
つまんない話になるよ。
「ヤヨは無人島に1つ何かを持って行けるなら、何を持っていく?」
「いきなり何だよ」
呆れ笑い、そして、「相変わらずの自由人」だって。
「水と動物と木の実しかないんだよ」
「無事に家に帰れる丈夫な船だな」
……。たしかに。合理的。
あ、感心してる場合じゃなかった。
「あたしね、この前藍ちゃんにコレ聞かれてね。すぐにヤヨが浮かんだの」
「……俺?」
物じゃねぇだろ、って笑うヤヨ。
ナトリウムランプの下、あたしから目をそらした。
「無人島に行ってもヤヨとなら毎日が楽しいって思ったの。何があっても命がけで守りたいな、って」
ヤヨはあたしの言葉に、下を向いたまま笑った。
「そこは俺に守らせろよ」
繋いだ手。
太い5本の指が、かみ合う位置を探すように、
あたしの手の形を変える。
……恋人つなぎ。
「ヤヨのことは、あたしが守るもん……」
そんな可愛くないこと言っちゃったのは
この右手に走る緊張感のせい。
「ふーん」
ヤヨが空を見上げるから、
あたし、満天の星空に気づいた。
「お前はそうやって、人を翻弄するのが趣味?」
アクシュミ、そうつぶやきながら
恋人つなぎにされた指をあっさりとほどく。
ヤヨはあたしに向かい合った。
その手は
あたしのキャスケットのツバを後ろに倒して脱がせて。
「……何が言いたいんだよ」
ヤヨは橙の灯りを味方につけた。
ほっぺ赤いかどうかもわからない。
それどころか
余裕の目つきでこっちを見る。
ワンちゃんじゃない。
狂犬でもない。猫でも羊でも
なんでもない。
坂木弥生は
愚かなあたしを翻弄する男子。
あたしの後ろ頭に大きな手が触れた。
近い。近い。
20センチ未満。
……ズルイ。
たちまち紅潮するあたしの頬。
激しく鼓動する左胸。
目のやり場を探すけど。
あたしの目はヤヨを見たかったみたい。
ヤヨの余裕の表情は、またあたしの心臓を急がせる。
視線がからんだ。
喉の奥から熱い空気とともに
「……好き」
やっと絞り出せた声。
もっと言いたいことはたくさんあるのに。
つまんない話になるよ。
「ヤヨは無人島に1つ何かを持って行けるなら、何を持っていく?」
「いきなり何だよ」
呆れ笑い、そして、「相変わらずの自由人」だって。
「水と動物と木の実しかないんだよ」
「無事に家に帰れる丈夫な船だな」
……。たしかに。合理的。
あ、感心してる場合じゃなかった。
「あたしね、この前藍ちゃんにコレ聞かれてね。すぐにヤヨが浮かんだの」
「……俺?」
物じゃねぇだろ、って笑うヤヨ。
ナトリウムランプの下、あたしから目をそらした。
「無人島に行ってもヤヨとなら毎日が楽しいって思ったの。何があっても命がけで守りたいな、って」
ヤヨはあたしの言葉に、下を向いたまま笑った。
「そこは俺に守らせろよ」
繋いだ手。
太い5本の指が、かみ合う位置を探すように、
あたしの手の形を変える。
……恋人つなぎ。
「ヤヨのことは、あたしが守るもん……」
そんな可愛くないこと言っちゃったのは
この右手に走る緊張感のせい。
「ふーん」
ヤヨが空を見上げるから、
あたし、満天の星空に気づいた。
「お前はそうやって、人を翻弄するのが趣味?」
アクシュミ、そうつぶやきながら
恋人つなぎにされた指をあっさりとほどく。
ヤヨはあたしに向かい合った。
その手は
あたしのキャスケットのツバを後ろに倒して脱がせて。
「……何が言いたいんだよ」
ヤヨは橙の灯りを味方につけた。
ほっぺ赤いかどうかもわからない。
それどころか
余裕の目つきでこっちを見る。
ワンちゃんじゃない。
狂犬でもない。猫でも羊でも
なんでもない。
坂木弥生は
愚かなあたしを翻弄する男子。
あたしの後ろ頭に大きな手が触れた。
近い。近い。
20センチ未満。
……ズルイ。
たちまち紅潮するあたしの頬。
激しく鼓動する左胸。
目のやり場を探すけど。
あたしの目はヤヨを見たかったみたい。
ヤヨの余裕の表情は、またあたしの心臓を急がせる。
視線がからんだ。
喉の奥から熱い空気とともに
「……好き」
やっと絞り出せた声。
もっと言いたいことはたくさんあるのに。



