【完】ぎゅっとしててね?

「手なんか繋いでどうすんだよ」


ヤヨ、横目であたしをちらり。



「だめ?」



あたしが聞くと、
ほら、いつもの呆れ顔。



「芙祐って……マジでどうしようもない」



女の直感、当たった。



ぎゅっと、握り返された掌。


ぎこちなくて、ちょっぴり緊張感。
でもあったかくて大きくて優しくて、包まれ感はなまる。



にぎわう境内。
屋台が連なる。



どんどん鼓動は速まっていく。



顔も、火照る。
ぱたぱた、手で扇いでいたら。



「暑い?」



屋台で売ってた冷やしパイン、ひとつ。
あたしにくれた。
ヤヨって、スマート。



「ありがとう」


「遅刻のお詫び」


つん、そっぽ向く。
照れ屋さん。照れ屋さん。



冷やしパインを受け取って、
少し歩いたら屋台の連なりが終わった。


目の前には神社。
それも、ひとけがない。


たった一つのナトリウムランプだけが、
本殿を照らしてる。
橙色の世界。



ここで言おう。
あたしの気持ち。