あたしはまだ、その人に想いは伝えてない。
告白って怖くない?
あたしは怖いよ。
普通科の廊下の窓から、暇つぶしに遠くを見つめてたら。
「坂木!模試、校内1位だったぞ!」
先生に褒められてるヤヨちゃん、発見。
やばい、あたし2位。
ついにヤヨに負けちゃった。
ヤヨはあたしを見つけて、近づく。
何、その勝ち誇った顔。
「勝った」
「勝ったかわかんないじゃん。同率1位かも」
「何位?」
「……2」
「まじで?初めて勝った」
ヤヨ嬉しそうだけど。
まぐれだよ、まぐれ。
「次は負けないし。ちょっと調子悪かっただけだし」
「桜木慶太に振られた時だったもんな」
……知ってたか。
また、ザマアミロ?
悪い猫ちゃん。
「……んだよ!やめろ!」
髪の毛ぺしゃんこの刑だよ。
「次は負けないよーだ」
あっかんべぇ。
タカガ恋愛に
あたしの生活が左右されるなんて。
一生の不覚だよ。
……なんて。
タカガじゃなくなってきたけどね。
受験勉強、本当に頑張んなきゃ。
でも、教科書開いてても、
やっぱり、いつも。
”スキな人”が浮かんでくる。
「大好き」って伝えたくなる。
でも、ちょっと慎重に行きたい。
なんだろう、これ。
「だからそれがいわゆる恋だって」
藍ちゃんにまた怒られた。
「芙祐ちゃんまた藍ちゃんに怒られてんの?」
「うん。アイノムチ」
「ははっ。仲良いね」
通りすがりの慶太くんとも
あたし、普通に話してる。
別れたらオシマイが鉄則のあたし達だったはずなのにね。
慶太くんを見送ってから、藍が聞く。
「で、芙祐って、誰のことすきなの?」
あたしの片思いの相手っていうのは、
【名字に「木」のつくひと】だよ。
「桜木?坂木?」
ナイショ。