「芙祐ちゃん」
小さな背中、ポンポンとたたく。
あまりに泣きじゃくるから、ぎゅっと一回抱きしめた。
「……ごめんね。もう付き合えない」
「……っ。なんで……」
好きだからだよ。
大好きだから。
「嫉妬しすぎて疲れた」
大好きすぎて疲れた。
「嫉妬、って。ヤヨ……?もうヤヨとは……っ、何も」
「俺のために、弥生くんのこと忘れられるの?」
「当たり前だよ!」
うそつき。
もうね、芙祐ちゃん。
「別れたいとしか思えない」
自己暗示ももうやめて、
心の底から幸せになりなよ。
「ごめんね、芙祐ちゃん」
腕の中でしばらく泣いてた。
でも、日が落ちるころには、芙祐ちゃんも納得してくれた。
「今まで……ごめんね。ありがとう」
芙祐ちゃんの真っ赤な目。
その目が笑みを作ったとき
俺も泣きそうになった。
芙祐ちゃんから離れて、立ち上がる。
芙祐ちゃんは
最後1回くらい、
俺だけを見てくれたかな。
「帰ろっか」
夕暮れの道、手をつながずに歩いた。