【完】ぎゅっとしててね?

芙祐ちゃんって、頭いいよね。


学年でもいつも順位はヒトケタだもんね。
本当にすごいと思うよ。



全然バカじゃないじゃん、芙祐ちゃんは。



だから、とっくにわかってるんでしょ。


……誰のことが1番好きなのか。



「もう遅くなるし送ってくね」



「まだ時間平気だけど」



「うん。でも行こ」



にこっと笑って、芙祐ちゃんのあったかい手の平を握った。



どうせなら、春らしい芙祐ちゃんが見たい。


なんか春って似合いそうじゃん。


「こっちから帰るの?」


「今日二回目の寄り道。どう?」


「うん、いいよ」



にこにこ、俺の手を握りしめて。


たどり着いたのは、川沿いの桜並木。


ここのは学校前の桜並木より、散るのが早い。


花びらの絨毯。



「全面ピンク。かわいー」



芙祐ちゃんはにこにことその道を歩く。



風で揺れる栗色の髪。
髪を抑える小さな手。


花びらがそのうえを舞う。




……やっぱり春が似合うね。芙祐ちゃん。



夏も、秋も、冬も。
芙祐ちゃんといっぱい思い出作ったから。



短かった春の分。
この姿を最後に焼き付けておこう。




芙祐ちゃんのまわりを
桜の花びらがひらひらと舞い散る。
夕方にはまだ少し早い、青空。



「慶太くん、こっちこっち」



芙祐ちゃんは大きな目、輝かせて。
俺を手招きする。



……芙祐ちゃんのところには



行かないでいてあげる。