「弥生っ。かーえろ!」



その声とともに目を奪われたのは。
ヤヨの腕をぎゅっとつかんで隣をキープした、女子。



ヤヨ、もしかして彼……




「あいつのことはもういいだろ」



慶太くんに強く腕を引っ張られた。


ちょうど目の前にあった空き教室に連れられて、すぐにドアを閉められた。



慶太くんの咎めるような視線に、


「ごめん……なさい……」


あたしの声、ちょっと震えた。



「……はぁ」


慶太くんはため息とともに、あたしの腕を離した。



「俺がごめん。何やってんだろうね」



帰ろうか、って。
またにっこり笑う。



ごめんなさい。
慶太くん。



「……もっと怒って」



全部。
責めて、咎めて、
あたしの目、覚ましてほしい。


そんな甘えは通用しないかな。



「んー……」


慶太くんは困った顔であたしを見る。



「また今度ね」



笑顔で流された。