「ヤヨちゃん、ヤヨちゃん」



ヤヨのカーデの袖口
つんつんと引張った。



「なんだよ?」



ヤヨはピンって、あたしの指先を跳ね返す。



「雨が止むまで今日の数学の課題しよ?」


「そうしようか」



窓の外は雨ザーザー。
机と机をくっつけて……。



ヤヨのペンはガリガリ進む。
あたしのペンはくるりくるりと回ってる。



ヤヨ、計算すごいから。
フラッシュ暗算とかできちゃうから。



あたしは計算遅いけどね。
暗記は得意なの。



ヤヨが全部解き終わった頃、やーっと公式覚えたよ。


あとはヤヨの答え写すだけだよね。




「……セコ」



って言うくせに。
写しやすいようにノートを傾けてくれる。
ヤヨはすぐ敵に塩を送るんだもん。
とってもいい子。