爽やかな音楽とともに、エンドロールが流れ始めた。



「いいお話だったね……」




目と鼻の頭、あと頬が赤くなってる。
うるうるした大きな目。
ぐすん、て。



いま、通りすぎたのカップルの男が芙祐ちゃんをチラ見したね。うん、可愛いよね。




まじで見せたくないんだけど。
独占欲ってこんなもん?



みんなが館内から出終わったあと。
あと数分はここ、貸切でしょ。



「芙祐ちゃん。おいで?」



「え?」



両手、広げてみた。



はにかんで、うれしそうに抱きつきながら俺に問う。



「なんで?」



「抱きしめたくなったから」



芙祐ちゃんをすっぽり腕の中に入れて、「大好きだよ」って付け足した。



やや薄暗い館内。ふたりきり。
芙祐ちゃんをそっと離した。



もっとしてって言うんでしょ?


……ちょっと待ってね。



「誕生日おめでとう」




プレゼントを手渡した。



「……え?!誕生日知ってたの?」



2月14日、冬生まれの芙祐ちゃん。



「バレンタインだもん、慶太くんが主役じゃなくなるのやだから言わなかったのに。何で知ってるの?」



「俺を誰だと思ってんの」



「だいすきな、だーりん!」



満面の笑みで俺の腕に飛び込んで、




「ありがとう。慶太くん」




ぎゅっと俺を抱きしめた。