【完】ぎゅっとしててね?

今日はバレンタイン。


四角い箱を持っていく。
この前芙祐ちゃんが遊びに来たとき、
つい出しっぱなしにしてて、ばれかけたやつ。


芙祐ちゃんはなんか誤解してたけどね。変態。



「けーいたくん」


ひょっこり顔を出す、芙祐ちゃん。
長い茶髪はいつもより丁寧に巻かれてふんわりしてる。



きゅうっと上がった口角、俺を見上げる大きな目。
きらんきらんだね。100点。



「俺が迎えに行くって言ったのに」



芙祐ちゃんの方から英文科に来るんだから。
楽しみなんだね。わかりやすい。



「だって今すぐ会いたかったんだもん」



べ、って。舌、ちょっと出したね。
はいはい、カワイイから他のやつに見せないで。



「行くよ」


肩を抱いて、撤収。
そんな俺を見上げるように、斜め上を仰ぐ目線。



「前見て歩かないとこけるよ」


「ヘーキ。慶太くんがいるもん」



にっと笑ったと思えば、ぎゅうっと腕にしがみついてきた。