「そうだ。ねぇね、これ見て慶太くん」


左手に持ったスマホの画面を右手の人差し指で撫でながら。
口もとはにっこにこ。
寝起きとは思えないほど天真爛漫だね。



「あった!これ、一緒に見に行きたい」



そう言って俺にスマホを向ける。
最近上映されたばかりの映画、恋愛モノ。



テレビでその映画の番宣見た時から、芙祐ちゃんが好きそうだなって思ってたよ。


これはもう


「気が合うね」


って苦笑するとこ。



「何その顔ー?」



ぷうっと頬を膨らませて。
違うよ、行きたくないんじゃなくってね。



「ちょうど連れて行きたいって思ってたから」


てか、チケットもう取っちゃったし。
あーあ。


気を取り直してにこっと笑うと、やっと頬の空気が抜けたみたい。


「以心伝心?」


首をかしげて、俺に問う。
そうだねって言ったら「にひひ」だって。
嬉しそうだね、芙祐ちゃん。



昼休みも終わって、5、6時間目は英語とライティング。



放課後になったら今日はさっさと芙祐ちゃんを迎えに行こう。



弥生くんを無視する”ザイアクカン”から救ってあげる。



芙祐ちゃんって、どうしようもない。
ほんと馬鹿。


大好きだよ。