茶色い髪、さらりと掬ってみる。


耳元に顔を近づけて、


「芙祐ちゃん」


名前呼びながら、頭を撫でたら



「キャ―――」とか「ギャ――」とか。
教室中、80dBのざわめき。



思わず、ははっ、て笑っちゃったら、
「キャ―――」だって。
面白いクラスだね。




「え!?」



芙祐ちゃんが2回目の悲鳴でようやくガバっと顔をあげた。



「おはよ」


きょろきょろあたりを見回す芙祐ちゃんが、
一瞬目を止めたのは、弥生くん。



「……あ」



そんな芙祐ちゃんを見る俺の視線、気づいた?
やっちゃった……って顔してるね。


俺の事、そんな目で見なくていいよ。
そこまで小さい男じゃないから。



頬杖つきながら、芙祐ちゃんの口元にパンを差し出した。
芙祐ちゃんがいつもやるやつね。


されるのは、初めて?



「いる?」


そう言って、口角をあげたら。



大きい目をちょっと伏せて、「あむ」って擬音が聞こえそうな、食べ方。



頬杖ついたまま。
笑みがこぼれるよ。



「どうしよう、味がわかんないかも」



火照る頬、両手で押さえて。
パタパタ、見えないしっぽ振って。
嬉しそうに俺を仰ぐ。



もう一回して?だって。



「馬鹿だねぇ」




くすくす笑いながらパンを差し出した。



芙祐ちゃんの小さな口は、
かぷっと齧ってリスみたいに。
もぐもぐ。もぐもぐ……味わいすぎ。



「美味しさひゃくまんばいだね」



なんてことを言いながら、
めちゃくちゃいい笑顔するじゃん。



ちょっと、今のは可愛すぎるね。