SIDE 芙祐

***


今までの彼氏って、なんか強引だった。
こんなにお前のこと大好きなのにって。
押し付けがましくて、束縛されて、散々だった。
北風と太陽ってあるじゃん。
あれの北風。



だけど。
慶太くんはね。太陽。
あんなに心の底から愛されて
あたし、応えないわけにはいかない。



帰りのHR。
先生はいつものようにあたしたちに仕事を押し付ける。



「ヤヨ、これあたし一人でやっとくよ。試験近いし、勉強したいでしょ?」



「印刷だけだろ。行くから」



「……そ?」



……失敗。
ヤヨとなるだけ2人きりにならないようにしようって思ったのに。




だって、この前。


”どこにも行くなよ”


慶太くんが寝たふりしてるあたしに、この前そう言ったの。
かすれそうな小さな声。




「……あたしってヤヨのことキープしてる?」



「は?どの口が言う」



「してるの?」



「逆だろ。この悪魔が」



ヤヨ、文句つらつら言う。


ハッキリ振るわ、慶太くんと目の前でいちゃいちゃするわ……あ、この愚痴多分長い。


だいぶ聞き流した頃。



「ちょっと期待させたと思えば。お前さっき避けようとしただろ?ほんと悪魔」



「さっきから悪魔ってひどいんだけど」


「うるせぇ」


つんって、そっぽ向く。ヤヨ。