SIDE 弥生

***



「起立、礼」


誰かさんが教室に来ないから。
また俺が号令係。


今ラッキーなことにいつもより少し早く一限の授業が終わった。



芙祐はまだ教室に来ねえし。



気まずいからサボったんだろうけど。


サボった後、どうする気だよ。
教室に来るタイミング見失ってないか、あいつ。



大丈夫かな、とか。
心配になってきた。俺のせいだけど。





……でも今更、なかったことにはしないから。



2回目のキスをした瞬間。



人の彼女だろうが、何だろうが、悪いけどどうでもよくなった。



今まで真面目に生きてきたはずなんだけど。
全部あいつのせい。



「弥生どこ行くの?」


「芙祐のこと迎えに行ってくる」



藍にそう言ってから階段を下りて、とりあえず玄関の方に向かった。




「授業中に何してるんだ!」



突然廊下中に響いた、先生の怒鳴り声。



……芙祐だ。
あいつすげー怒られてね?



って、よく見たら桜木慶太も一緒に怒られてる。




……なんだ。
ふたりでいたのかよ。





予鈴が鳴って、二人が先生から解放されたから、
芙祐にばれないように教室に戻ろうと踵を返したとき。




「キスくらいであんなに言う?」


「まぁサボってたのがまずかったんでしょ。芙祐ちゃん大丈夫?」


「怒られ慣れてるよ」


「だと思うけど」




真剣にあいつ、悪魔だと思う。



俺が後ろの席ばっかり気にして、若干反省してた時間を返せ。