【完】ぎゅっとしててね?

玄関前の廊下。
あたしひとり、立ち尽くしてた。



こんなめちゃくちゃな気持ちなのに、
平気で教室になんかいけないよ。
だいたいあたしの前の席、ヤヨだし。



スマホをとりだして、一番会いたい人の名前を探す。



慶太くん。



<会いたい・*・:≡( ε:)>



授業中にこんなふざけたメールに付き合ってくれるかな。
すぐに既読がつくあたり。
授業聞いてないね、慶太くん。



<授業中じゃないの?>



<さぼりで玄関にいるんだよ>



あ、返事返ってこない。
無念。



おとなしく一人で時間つぶそう。




ひまつぶしに掲示板を眺めていたら。




「なにしてんの」



くすくす笑いながら、慶太くんが来てくれた。



「慶太くん……授業は?」



「え?だって会いたかったんでしょ?」



うん。


うん、すごく。
ホントはすっごく会いたかった。


でも、本当に授業抜け出してきてくれる?普通。




「何?どうしたの?」




心配そうに見つめる彼は、
…….なんて優しい人なんだろう。




ぎゅっと抱き着いたら、慶太くんはあたしの頭を撫でた。



「会いたかっただけ。なんとなく」


「ふーん?まぁ、そういうことにしとこうか」



そう言って、あたしをぎゅっと抱きしめた。



……あたしはやっぱり、この人が大好き。
確認するまでもない。