【完】ぎゅっとしててね?

夕暮れの玄関、薄暗い下駄箱の前。


あたしがローファーを履くのを、慶太くんが待ってるところ。




「なんの意味もないね、コレ」


慶太くんはあたしと向かい合い、右手の指輪に触れた。



そしたら、あたしの後ろの方に視線を移したから、


あたしも後ろをふり返ろうとしたんだけど。



「キスしよ」って耳元で囁かれた声に固まって。


その隙に、慶太くんの唇が、あたしの唇に優しく触れた。



……赤面。
不意打ちに弱いよ。



「俺のこと好き?」



「大好き」



「じゃあいいよ。勝手にされたキスなんかカウントしないから」



「……はい」



ニコッと笑って手を繋がれた。
大きい手のひら。





「弥生くん、次したらマジで殺すから」



笑みの消えた、鋭い目つき。
明らかにあたしより後ろの方にかけた声。


後ろを振り向いたら、ヤヨがいた。




「……殺せば?」



ヤヨがしれっとそう答えるから。慶太くんの手のひらに少し力が入った。




ヤヨの馬鹿。……大馬鹿。


……なんでキスしたの。