「あのさぁ」


ヤヨがあたしに詰め寄った。
思わず、座ったまま後ずさり。


背中に壁があたった。



「な、な、」



なに。
怒ったのかな?




「人のこと犬とか猫とか……いい加減にしろよ」



し、き、ん、きょ、り。



「……近いから」



顔を背けて、逃げ場を探した。
ないよ、そんなもの。




「お前以外に優しいなら、それは偽善なだけだから」




ヤヨの顔をそーっと見上げたら、
にやり、口角をあげた。



戸惑った、その一瞬。




顔を近づけられたと思ったら、ちゅっ、って音をたてて。



ヤヨと、二回目のキス。


……奪われた。



呆然と動けないあたしに。




「はい、浮気」




ヤヨはそう言って、嘲笑った。