ぴゅーっと、突然強い風が吹いた。
秋の風っていきなり冷たいからキライ。



「芙祐ちゃん寒くない?」


「んー、ちょっと」



「こっちくる?」


慶太くんがにっこり手招きする。


「行く」



そんなの迷うわけないじゃん。



あたしの傘は閉じて、相合傘に変更。
差し出された慶太くんの大きい手。あったかい。


シアワセをかみしめながら歩いていたんだけど。



「……”坂木”ねぇ」


って突然、慶太くんが呟いた。



「んー?」


「ちょっと妬けるんだけど、これ」


そう言って、体操服の名前の刺繍を見つめてる。



「本当、芙祐ちゃんと弥生くんて仲いいよね」



「うーん。仲はいいけど……友達だし」



あたしが返答に困ってたら、慶太くんは軽く笑ってゴメンゴメンって。



「嘘嘘。わかってるから。ガキみたいなこと言ったね」



あたしの髪を撫でる、いつも通りの優しい手。
でも慶太くんの気持ちは大丈夫なのか不安になって、見上げたら。



腕で顔を隠しながら、そっぽ向くの。



「あー。俺、やばいね」



その一言に戸惑っていたら。



「芙祐ちゃんにはまりすぎたかも」



慶太くんはそう言って、困ったように笑った。