SIDE 慶太


***


長い睫毛を濡らす涙。
目元に滲んだ黒いアイライン。


なんて可愛いんだろうとか。
呑気に思う俺がいるよ。



「ごめんね、芙祐ちゃん」


「こちらこそ」



俺の腕をぎゅっとつかんで離さない。



芙祐ちゃんの独占欲。
意外とすごいみたい。



今までの彼女の独占欲には、鬱陶しさすら感じたけど。


なんでだろうね。



「可愛いね。芙祐ちゃんは」



ぐずぐず、鼻をすする彼女を
離したくないなって、心底思うよ。




「……あのさぁ」



俺は立ち止まって、後ろを振り向く。
さっきから、ソレは隠れてるつもり?



「誤解は解けたから。安心して。ごめんね」



電信柱に隠れている、そこの2人。

不安顔の藍ちゃんと、
殺気でできた、弥生くん。