【完】ぎゅっとしててね?

クレープの屋台の前。
文化祭にしては、クオリティ高い。


「うますぎない?」


「あたしも思ってた。あの子料理絶対上手だね」


「ははっ、料理って。……芙祐ちゃんは料理するの?」


「するように見える?」


「しないように見える」


……ご名答。


「最後に作ったのは中学のときの家庭科だよ」


「ははっ。俺と一緒じゃん」


ベンチに座って仲良くお喋りしてるんだけど。


「……なんか視線すごいね」


「芙祐ちゃん人気だからなぁ」


「ソレ、慶太くんだから。人のせいにしないの」


「わかってないねぇ、芙祐ちゃん」



慶太くんはあたしの口元のついたクリームを掬って、にっと笑う。


「ちかいよ……」


思わず顔を伏せたら



「可愛いね」


そういって髪を撫でた。



「んー、調子狂う」


あたし、照れ隠しの技とか持ってないから。



「そんな顔、誰にもみせたくないんだけど」



慶太くんは、いたずらっぽく笑った。