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文化祭の前日。


授業は午前で終わり。


午後は焼きそばの準備で大忙しだった。


めっちゃ働いたからね、あたし。




「ヤヨちゃん、コレは?」


「それはやっといた。こっち頼むわ」



ヤヨはあたしの3倍働いてたけどね。





あたしのクラスは外が売り場になる。



みんなは外で準備中。
あたしは効率よくはやく帰れるように、こっそり中の片付けを先にしておくことにした。



ちょっと荒れ放題…?
藍ちゃん召喚しようかなって思ってたら、トントンって音がした。




音の先、教室のドアの方には、慶太くんがいた。



いつもその人影が視界に入ると、ドキンってなる。これって気のせいじゃないと思う。




「ひとり?手伝うよ」



「英文科は?準備終わったの?」



「うん。これ片付ければいい?」



「ありがとう」



床に乱雑に置かれたペンキ。

ひっくり返したら危ないなあ。


こんなのうちのクラスのリスクマネージャー、藍ちゃんが見たら絶対怒るよ。



そう思いながら持ち上げると




「それは俺がやるよ。芙祐ちゃん汚れたら困るでしょ」



そう言って、ペンキを片付けはじめた。



「体操服だもん、汚れても大丈夫だよ」



「いいから。甘えてよ」



にこって笑う、いつもの優しい笑顔。




慶太くんって、気遣いとか、ストレートでいつもわかりやすいよね。


思ったまま言葉にしてくれるから。



「ありがとう。ほんとに優しいよね」



だからあたしもそうするね。

ぜーんぶ、直球。



ちゃらいとか思うことあるし、勿論。


慣れてるからだとは思うけど。


悔しいけど…あたし多分、そういう直球、好き。結構スキ。



回りくどいのとか、
よくわかんないもん。