キッチンに戻る途中、自動ドアが閉まる寸前。
一瞬、あいつの後ろ姿に見えたような。



「……芙祐?」


やっぱり芙祐だ。
なんであんな薄着なんだよ?


まさかなんかされた!?


不安がよぎる。急いで店を出て追いかけた。



「芙祐!」


細い腕をつかんだ。


「……え~?」



トロンとした目。
駐車場のライトに照らされた赤い頬。



「……お前、なに?酒飲んだ?」



「あつーい」


「いや寒いから。風邪ひくだろ。中戻るぞ」



「ちょっとだけー」


「はぁー?じゃあ……ちょっと待ってろよ」



走ってキッチンへ。
俺今日まだ休憩とってないし。



水持って、上着もって、みんなに休憩しますの一言伝えてから。



「芙祐。ほら」


「ありがとー、やっぱ寒くなってきたところだったんだよ」


「だろうな。俺でも若干寒いし」


バイトの制服、薄手のロンTをつかまれた。



「じゃあお礼に暖めてあげよーお」



腕をぎゅっと抱きしめられた。


「いいから。やめろ」


「ふぅー……」


「まじで酔いすぎだろ。なんで飲んでんだよ。捕まるだろ、店が」


「間違ったのー。お冷と、お酒?」


「バカじゃねえの」


「初めて飲んじゃったよ。ずっと法をじゅんすしてきたのにー。ねー?」


「順守な」


「うんー……」



本当にやばい。酔いすぎ。

くたっと俺にもたれてきた。


腕を抱きしめられたまま。