【完】ぎゅっとしててね?

慶太くんに通せんぼされていたら、


「通りたいんだけど」


って、ヤヨがクラス分のノートを抱えて戻ってきた。



早くヤヨに謝らなきゃ。
そう思って口を開くより早く



「早く来いよ」


ってヤヨの手はあたしの腕を掴んだ。

あたしはひっぱられる。ズルズル。
いつの間にかヤヨの席の前。




「今日はダメみたいだね」


慶太くんは、残念、って笑ってる。


「またデート誘うから。ばいばい芙祐ちゃん」



「あ、うん。ばいばい」


手を振って、教室から出て行った。
アッサリと。


「……やっぱり本気でもないのかな?」



「遊びだろ。慣れてんじゃん」


「うーん、そっか。…って、ヤヨが話してくれてる……っ」


じーん、とした。
ちょっと泣きそうだよ。


「ヤヨちゃんごめんね。今度からほっぺはびよーんとしないから」



「…んなことで怒んねえよ」



「じゃあ何で怒ってたの?」



「……いいよ。もう、別に」


「よくないよ、直せないじゃん。ヤヨと喧嘩なんかしたくないよ、あたし」