「手伝って貰えばよかったのにー」


大量のプリント配りながら、文句いったらヤヨがハーってため息。呆れられた。


「……ちょっとは遠慮しろよ」


「人の好意には素直に甘えていいときもあるんだよ、ヤヨちゃん」


「俺にこれだけ印刷させといてまだ甘える気かよ」


「あはは、ありがと愛してる」


「……うっざ」



ぷいって一番遠くの列まで配りにいっちゃった。
あれはだね、照れたんだよ。たぶんね。
ヤヨは今、愛に飢えてるからね。



全部配り終わって、列に並んだヤヨちゃんの背中めがけて


「照れ屋さーんっ」


って体当たり。



「まじでしばく」


「あ、あれ?」



後ろから両手、捕獲されちゃった。



「身動きとれないんですけど」



っていうか、近いんですけど!
あたしの両手はヤヨの両手につかまえられて、後ろからはがいじめにあっちゃった。



「はーなーせ!」


って暴れるのにびくともしない。


ビクともしないから抵抗するのやめてみたら、落ち着いてきちゃった。



ヤヨの胸に背中をもたれると、余計にいいかんじ。それに柔軟剤のいい匂いするし。




両手は拘束されたまま、後ろのヤヨを振り返って見上げた。



「なんか落ち着いてきたかも」



「ふざけんな」



そう言うとヤヨは、両手を離して、おもいっきりあたしの背中を押してきた。悪い猫ちゃんめ。