【完】ぎゅっとしててね?

長い学年集会の後の長いお説教もいよいよ終盤へ。


「桜木慶太……。お前なぁ、アメリカにいたからって茶髪にピアスが当たり前だと思うなよ!ここは日本なんだから調子にのるんじゃない!」



なんで俺だけ名指しされてんのか知らないけど。
すげー長いんですけど。
アメリカアメリカ、うざいんですけど。



げんなりしてたとき。



「せんせー。あたし海外旅行行ったことなくて、パスポートすら見たことないけど茶髪ですよ」


そう言いながら、巻かれた毛先をくるくる指で弄び、口角をあげるのは芙祐ちゃん。


さすがに、俺も苦笑い。

この子、なんで挑発してんの?



「だからそれは、郷に入ったら郷に従えってこと……だから」


「あたしにはそう聞こえなかったですけど……」



先生が言葉に詰まってきた。
しどろもどろになる前に


「ごめんなさい。生意気言いました」


へへって笑う芙祐ちゃん。
先生を見上げる。



うわ、ずるい。上目遣い。
わかってやってんのかな、この子。



先生の勢いは少しばかり弱まって、いつの間にか解散。



……きっと、あの先生は芙祐ちゃんが苦手だ。