あと5分、あと4分…3、2、1…。

「はい、今日はここまで。」

4限目のチャイムが鳴ると同時に、老年の教師はさっさと教室を後にした。

お経のような古典の単元から解放された生徒達はさっきまでの倦怠が嘘のように、生き生きと弁当を広げ始めていた。

ここは第2校舎2階の2ーB教室。
割合都市部にあり、進学希望者が殆どの、割合裕福な家のお嬢さんが多く通っている、女子高だ。

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「ねえ、聞いてよミッキー。今日の放課後ね、先生と会うの。しかも二人っきりで」

本話の主人公である篠崎美園もまた、例外ではなく、中学からの友人である堂島ミキ達と机同士をくっつけ、食事問いうよりよりは会話に勤しんでいる。

「はいはい。どうせまた、部室でプリントのマル付けとかでしょ。それがどしたの」

「違う違う、そんな“上手く使われてる”みたいなやつじゃありません。それがね…誰にも言っちゃ駄目よ、なんと、放課後デートなの!」

「はあ?妄想しすぎでとうとうアタマおかしくなったの。そんなわけないじゃん」

「ええ、何とでもいって。ゴメンねミキちゃん、私、大人の階段登っちゃうかも♥」

ミキは大仰に溜め息をつき、やってられないというように、目の前の弁当に集中し始めた。

 そう、彼女は目下、クラス担任と恋愛真っ只中……、

ではない。

片想いの真っ最中だ。