『そう♪』 彼はやっぱり笑顔で言う。 さっきは暗くてよく見えなかったけど、 彼は貴族のような…… ハロウィンとかで着そうなものを身にまとっていた。 あ、名前、聞いてない。 「あの、貴方の名前、教えてください」 『そーゆー時ってまず自分が名乗るもんじゃないのー?』 「ぁ、ごめんなさい……! 私、森崎りんごって言います」 森崎りんご、と彼は復唱する。 『あぁ、僕は』 名前がないんだ。 確かに彼はそう言った。