イライラと気が立つ一週間を過ごして、週明けの月曜。
あっさりとその誰かは、分かった。
朝
通学路を歩いていると、前方に見えた人影
いつも待ち合わせる友達から、風邪をひいたとメールが来たために、久々のひとりでの登校だった。
ふわりと、胸元で揺れたその女の子のネクタイは…緑色
学年別に色が定められたそのネクタイは、私の胸元で揺れるその色とおんなじだった。
肩で揺れるその子の黒髪
くせ毛なのか、可愛らしく控えめに跳ねた毛先
気にしているのか
「もう!」
と指先で抑えるその仕草
あ、と思いつく
時々、登校が同じになる夕雨か。
小学生の頃、金管バンドで同じ楽器を6年間ともに吹いた縁を持つ彼女とは、直接クラスが同じになったことはないけれど、仲良く談笑する仲だったから。
今日は、向こうもいつも隣を歩く楓がいないみたい。
一緒に行こうと駆け寄れば、思った通り。
くせ毛の彼女は快く笑った。
徒歩15分余りの道を、他愛もない会話を楽しみながら歩く。
ふと気になって聞いてみた。
「そうそう、今回の数学の一位、誰か知らない??」
「ふへ?」
唐突に切り込んだからか、なんとも間の抜けた柔らかい声を出した後で。
まぶしそうに目を細めた。
…今、今思えば君と夕雨は、同じ仕草をしてたね。
「あぁ、私がそうだったよ」
控えめに夕雨が言う。
「あ!そう…」
はっきり言って意外だった。
貼り出される上位30名の名が連なる定期考査の結果一覧には、確かに彼女の名前はいつでもあったけど。


