三日月の恋

家を出たい。

寂しげな、でも強い意志を感じるイチの横顔を見ながら、
『この土地から出てみたい』
という、私の薄っぺらな気持ちがまるで子どもじみたワガママに思えてくる。

やりたいことが明確にあるわけじゃない。

「私も…出るよ、ここを」

その決意だけは固い。


「うん…夏月はそんな感じだよね」

イチはこういう時、教室では絶対見せない顔をする。

友だちの前でもしない、たぶん私しか知らない…

少し笑うイチの儚げな瞳の奥に、少しだけ私の心を揺るがそうとする何か。

その正体を探ろうと私はイチの瞳の奥を見ようとする。