修羅は戯れに拳を振るう

雨の格闘特区。

街の入り口に、一人の青年が立っていた。

黒の短髪、額には鉢巻き。

白の袖無しの空手着に黒帯。

足元は何と裸足だ。

彼は肩に頭陀袋を下げて、街の中へと入っていく。

雨に濡れる事も、擦れ違う人々に奇異の目で見られる事も気にしていない。

街に入る所で。

「ようこそ格闘特区へ」

警備員らしき男性に呼び止められた。

「ここでストリートファイトをするには、選手としての登録が必要です。登録がない場合は乱闘騒ぎを起こしたとして逮捕される事もあります。登録しますか?」

「…ああ」

青年は静かに頷く。