修羅は戯れに拳を振るう

だがそんな師匠は、或る日突然に龍宇の前から姿を消す。

「兆候はあった」

龍宇は俯く。

「生き延びる為だった師匠の技…当然少なからず命を奪うという色はあったとはいえ、必要最小限に留められていた。しかしある時期を境に、師匠の教える技は、『如何にして相手を殺すか』、その一点にのみ集約され始めた」

『相手を倒す技』から『相手を殺す技』へ。

『無力化』から『生命活動の停止』へ。

似ているようでいて、決定的に違う。

倒すだけならば、無力化させるだけならば、相手の心を挫くだけでいい。

が、師匠はそれだけでは納得しなかった。

完全に抵抗させない為にはどうすればいいか。

殺す事が一番の方法だった。