修羅は戯れに拳を振るう

騒然とする道場生達。

一人が助けを呼ぼうとするも。

「っ!?」

開きかけたその口の中に、男の大きな手が突っ込まれた。

手は、道場生の舌を摑む。

これでは喋れない。

助けを呼ばせない為だった。

声が出せず、目を白黒させる道場生。

その様子を見ながら、男はニヤリと笑い。

「~~~~っっっっ!」

何と舌を摑んだまま、背負い投げの要領で道場生を投げる!

…舌を引き千切られるような激痛、直後に地面に叩き付けられる激痛。

道場生は白目を剥いて、完全に失神した。

残された道場生達も戦慄する。

何だこの男は。

リングの上、ルールの中で闘う方法しか教わっていない彼らに対し、男は信じられないような手段を以って攻撃を仕掛けてきた。

自分達が汗水垂らし、トレーニングの上で身に付けてきた技の数々が、急に児戯に思えてくる。

そんな彼らの狼狽する姿を見ながら。

「……」

男は再び口角をつり上げた。