修羅は戯れに拳を振るう

もう壮年とも言える年齢の男。

しかし動きは全盛期のそれ。

いや、円熟してきた中国拳法の腕は、寧ろ全盛期を上回る面すらある。

瞬時にして龍宇の懐に飛び込む龍太郎!

「…!…高速歩法、活歩(かっぽ)か」

目を見張る龍宇に対し。

「っらぁっ!」

瞬時に間合いを詰め、背面部で体当たりする鉄山疾歩靠(てつざんしっぽこう)!

ガードを固めるものの、龍宇の足が踏ん張り切れずに滑る。

その隙を見逃さず、突き出した手と同じ方の足を踏み込む事によって、より強く体重を掛けて放つ事のできる掌打、天王托塔(てんのうたくとう)!

掌打は龍宇の顎をかち上げる!

「ちったぁ反省の色のねぇ悪い口は治ったかよ」

ニヤリと笑う龍太郎。

「……」

龍宇は口元から流れる血を、グイと拭った。