修羅は戯れに拳を振るう

「おい、そこの」

龍太郎は龍宇をギロリと睨む。

「金持ちの一人娘を夜中に連れ回すたぁ、碌なもんじゃねぇな」

「…俺は帰れと説得していたつもりだが」

龍太郎に誤解され、静かに言葉を返す龍宇。

だが龍太郎という男は、若い頃から人の話を聞かず、おまけに頭も悪い為に要らぬトラブルを起こす傾向にあった。

莉々とほぼ同い年の娘を持つ歳になっても、それは変わらぬようで。

「言い訳たぁ男らしくねぇな」

腰を落として重心を低くし、構える。

「空手着着てる癖に男らしくねぇ奴は許せねぇんだ。来い、性根叩き直してやる」

「龍太郎さん!」

「おい…俺は誤解だと言っている」

莉々と龍宇が釈明するも。

「あーめんどくせぇっ!来ねぇなら俺から行く!」

龍太郎は聞く耳持たずに仕掛けてきた!