修羅は戯れに拳を振るう

その時だった。

「親父さんに頼まれて、鬼龍と入れ替わりで様子見に来て見りゃあ」

声が聞こえ、莉々と龍宇は振り向く。

「それじゃあ誰にでも体を許すふしだらな売女じゃねぇか、何やってやがんだ莉々」

そこに立っていたのは、龍宇と同じような体格の男だった。

やたらと悪い目付き、筋肉質の体、全身には無数の傷痕。

特に胸元に除く大きな傷は、際立って見えた。

刀傷だろうか。

「龍太郎さん!」

莉々が目を丸くする。

丹下 龍太郎(たんげ りゅうたろう)。

鬼龍と同じ龍娘流中国拳法の使い手で、天神地区では支部の丹下道場の師範を務めている。

開祖・龍娘に次ぐ実力者で、彼もまた出資元のORIHAとは懇意。

莉々とも面識があった。