「それでは俺はここらで失礼する」

引っ繰り返ったままの親方が、大事ないと分かった。

幾ら倒した相手とはいえ、目を覚ますまで介抱してやる義理はない。

龍宇はこの場から去ろうとする。

「君も早目に帰宅した方がいい。幾ら強いとはいえ、若い女性の一人歩きはお勧めできない」

そう言って踵を返す龍宇。

そんな彼に、当然の如く莉々はついて行く。

裸足のままの龍宇と、白いロングブーツの莉々。

足音は嫌でも龍宇の耳に届く。

「…何か用か」

足を止めないまま、振り向きもせずに龍宇は訊ねる。