修羅は戯れに拳を振るう

が、それは一瞬の事だった。

突っ込んで来た莉々、相手が踏み込んで来た所に、龍宇も踏み込む。

非常に素早い巧みな動作によって莉々を崩し、莉々の服の襟を持った手以外、相手に触れずに投げる!

斜め後方へ突き飛ばすように投げ飛ばされる莉々。

その体が地面に叩き付けられる直前。

「っ!」

龍宇は素早く莉々の頭を浮かせ、後頭部強打を回避させた。

隅落(すみおとし)。

柔道の投げ技の手技の一つ。

名前は、一般的には『空気投げ』として知られ、嘉納 治五郎師範が『隅落』と名付けた。

「すまない」

龍宇はまたも詫びる。

「君の間合いの詰め方があまりに鋭いので、反射的に投げてしまった…怪我はないか」